『渋谷ではたらく社長の告白』藤田晋

いつものようにYouTubeを開くと、目をひくタイトルの動画を発見しました。

武井壮オススメの本2選】

「前みた動画では『ソクラテスの弁明』を薦めてたけど、もう一冊ってなんだろう?」すぐさま動画を再生開始。

 

質問者:武井さんが今まで読んだ本の中で、1番影響を受けた本はなんですか?

武井壮:一冊目は『渋谷ではたらく社長の告白』っていう本なんだけど、サイバーエージェントの藤田社長が「おれは21世紀を代表する会社をつくる」って言って起業したときの話が書かれてて、その本読んで「俺も芸能界で仕事できるようにもっと頑張ろう!」って思ったんだよね。二冊目は『ソクラテスの弁明』っていう本で……

 

なるほど。『渋谷ではたらく社長の告白』ね。

渋谷ではたらく社長の告白…

渋谷ではたらく社長の告白…

渋谷ではたらく社長の告白……

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藤田社長めっちゃ若くね?てか、髪長くね?

それもそのはず。初版が発行されたのは今から16年前の2005年です。ポケモンでいうと「ルビー・サファイア」のときです。

ひみつきち作りに没頭し、119番道路でヒンバスを狙い続け、一等がまったく出ないミナモデパートのくじに腹を立て、レックウザをなんとかモンスターボールで捕まえたくて1週間のゲーム時間すべてを”そらのはしら”でのバトルに費やした、あの「ルビサファ」の頃です。

藤田社長が会社の経営に毎日奔走していたのと時を同じくして、私はダブルバトルに燃え、マッハ自転車飛ばして進んでましたわ。ゲンキハツラツとね!

話を戻します。

「藤田社長、ライオン丸みたいな髪型だなぁ…」なんて思いながらページをめくり、さっと目次に目を通してプロローグ(まえがき)を読み始めます。

私はすかさず息をのみました。

 

え?なにこれ?

 

プロローグに書かれていたのは、絶望の淵に立つ男の嘆きでした。「この人…そのまま消えてなくなるんじゃないか…」そう思わずにはいられないほど、悲痛な言葉が並んでいました。「藤田社長の身に何が起きたんだろう…」はやる気持ちを抑えて1章から1ページずつ読み進めていきます。

自伝本の雛形といば、”作者の経歴を生い立ちから順に追っていく”というものですが、この本も雛形通りに話が展開していきます。

福井県で大手企業に従事する父のもとで生まれ育ったこと、音楽の道を諦めて起業家を志したこと、進学を機に上京するも麻雀に没頭したせいで留年したこと、その後は営業のアルバイトに精を出したこと、新卒ではバイトをしていた企業ではなくそのライバル企業に入社したこと、「起業する」ための下積みとして猛烈に働き詰めたこと、起業を誓い合った仲間を失ったこと、それでも一歩踏み出したこと、インターネット事業に狙いを定めたこと、やはり猛烈に働き詰めたこと、創業仲間の日高さん(日髙裕介:サイバーエージェント副社長)が会社に入り浸りだったせいで家の電気・ガス・水道が止められたこと、優秀な人材を確保することに奮闘したこと、渋谷にオフィスを構えたこと、ネットバブルの波に乗ったこと、バブルが崩壊したこと、

そして…

 

 

…おもしろい!いや、おもしろすぎる!!

読了後、すぐさま”マイ・ベスト本2021”に決定しました。「事実は小説より奇なり」なんてよく言ったものです。ただ、この本は今まで読んだ自伝の中でも群を抜いていました。

なぜ『渋谷ではたらく社長の告白』はこんなにも胸を打つんだろう…

理由はすぐにわかりました。この本が”エッセイ集”だったからです。

サイバーエージェントの企業サイトを訪れると、藤田社長が起業した当時に書いたブログがいまだに残っていました。

www.cyberagent.co.jp

ブログを読み終えた後、このブログの内容に加筆・修正を加えてまとめた本が『渋谷ではたらく社長の告白』だということに気づきました。著者の思ったこと、感じたこと、考えたことを自由に書き記すのがエッセイ。そりゃ、気持ちも溢れます。絶望的に暗い文章だって書きます。しかし、”だからこそ人の胸を打つ”。

エッセイ(ノンフィクション)の一番いいところですね。

最後に、本書の主要人物に藤田社長の兄貴分である宇野社長宇野康秀USEN-NEXT HOLDINGS代表取締役社長CEOという方がいるんですけど、この人、最高にクールです。まさに”兄貴”。見たことも会ったこともないですけど惚れました。

今季のMリーグ、私はパイレーツ推しでいきます。

あぁ!10月4日の待ち遠しか!

溜池山王外堀通りを、私はあてもなく彷徨っていました。

夜の空気には既に秋の気配が立ちこめ、夏は終わったのだ、終わりつつあるのだ、と私はぼんやりと考えました。

私は絶望の淵に立たされていました。

目の前は限りなく暗く、道行く人は目に入りませんでした。世界中に誰ひとりとして味方はいませんでした。顔はやつれ、神経がおかしくなりそうでした。

世界でたったひとり。私は孤独でした。

高校3年生で、ミュージシャンを諦め起業家を志しました。

社会に出てから誰よりも必死に仕事をしました。

恩人を裏切りました。

ろくに美味しいものも食べずに、仕事だけに夢中でした。

恋人と別れ、仕事ばかりの人生を選びました。

しかし、仕事とは何だったのだろうか。

自分の生き方は正しかったのだろうか。

これが本当に自分の望んだ人生だったのか。

そんなことさえもわからなくなっていました。

<21世紀を代表する会社を作る>

20歳のときに決めた自分の夢。

しかし夢は、その時、ついに終わろうとしていたのです。

(『渋谷ではたらく社長の告白』プロローグ)

【文中敬称略】

 

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